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「うわぁ、ドラッグの匂いがこもってますねぇ」
「……へ?」
男の前を通って玄関を潜った直後、その匂いが体中にまとわりつく。
当然だが男は何を言われたのか分からなかったらしく、間抜けな声で聞き返してきた。
「えっと……今なんて――ぐっ、」
素早く懐に忍ばせていたタオルとナイフを取り出して、声をだせないように男の口を塞ぎながらドアに押し付ける。
目を見開く男ににっこりと微笑みかけると、首筋に当てたナイフを勢いよく引いた。
「……おい、結局誰が来て…」
するといつまでも戻ってこない男を不思議に思ったのか、部屋の扉が開いて別の男が姿を見せる。既に目前まで迫っていた私は、男が声を発する前に、ドスっと心臓にナイフを突き立てた。
ぐっ、と唸り、口からは血が出る。そのまま体ごと押して男を盾にしながら部屋の中に入っていき、中の様子を確認した。
1LDKの間取りで、寝室に男が二人。そこにある大きなベッドの上に、行方不明になっていた例の女の子が全裸で横たわっていた。
「な、なんだテメェっ!」
女の子の上に裸で乗っている男に向かって行くと、そいつは咄嗟に掴み掛かろうと手を伸ばしてくる。それを避けて下から顎を押し上げると、頸動脈を切り裂いた。
血飛沫があがり、白いワンピースに赤い模様が出来る。びしゃりと頬に掛かった血を拭いながら、すぐ横で呆然と佇む男に距離を詰めた。
そいつは女の子を騙した闇金と繋がっている例の彼氏だ。どうやら女の子を犯している様子を録っていたのか、手にはビデオカメラがあった。
「死ね、屑」
それは、自分でも驚くほどに低い声だった。
男に掴み掛かりながら足を弾き、仰向けに倒れたヤツの口にタオルを押し込んでから、腹に向かって刃を振り下ろす。
敢えて急所を外したのは簡単には殺してやるつもりがないから。ここに閉じ込められて虐げられてきた彼女の苦痛は、こんなものじゃない。
何回も、何十回も、痛みを感じやすい箇所を狙ってナイフを突き刺す。
その度に悲痛な声をあげて痙攣する男だったけれど、しまいには反応もしなくなり、いつの間にか完全に事切れていた。
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