サイコ的ラブゲーム

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目的地に着き急ブレーキで止まると、シュリさんはさっさと車を降りていく。 たった今味わった地獄のような時間に心臓がバクバクしながらも、ボディーガードの役目を果たすために慌てて後を追い掛けた。 シュリさんの自宅はまさに豪邸だった。門の向こうには大きくて綺麗な建物が聳え立ち、どれだけの敷地面積があるのか見当もつかない。 彼女が無事家の中に入っていくのを見守るまでが俺の仕事だ。 ところが、一度門の中に入ったはずのシュリさんが足を止めて、何かを思い出したかのように戻ってくる。 俺の前に立ちサングラス越しに見上げてくる彼女を不思議に思いながら「どうしました?」と尋ねると、ふ、と赤い唇が笑みを零した。 「この後暇なの。セックスしない?」 「……しません」 「じゃああなたが一人でするのを見せてくれない?それで抜くから」 「……」 「それとも私が口でしてあげてもいいけど」 そう言ってわざとらしくちろりと赤い舌を覗かせるシュリさんに、意図せずに顔が引きつる。 本当に、何なんだ。初対面の相手に少しの恥じらいもなくセックスセックスって、この人の頭ん中どうなってんだよ。ってかさっき男を轢き殺そうとしたことでこっちが引いていることにも気付いてないのか。 「早く家に入ってください。何かあったら名刺に書いてある番号にご連絡を」 溜息を吐きそうになるのをグッと堪えて、一歩下がりながら告げる。 するとシュリさんはさっきみたいに俺の顔をまじまじと眺めた後、「そう、残念」と笑った。 「またの機会に誘うわ」 「困ります」 「どうして?」 「僕は仕事であなたのそばにいます。雑談は控えていただけますか」 「光冴って呼んでもいい?」 「……伊吹です」 「ムラムラして夜寝付けなかったら光冴に連絡するわ」 「前言撤回します。何かあった時は必ず志季さんにご連絡を」 「これからよろしくね、光冴」 人の話を聞けよ、と心の中で突っ込む。 最後の最後まで自己中な彼女は、門を通って玄関に向かうと今度は振り返ることなく家の中に消えた。
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