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「どうだ。ヤバいだろ彼女」
「信じられないです。なんなんですかあれ。さっきの普通に殺人未遂ですよ」
車に戻り、運転席に移動している志季さんについ愚痴ってしまう。いくら仕事であれ文句を言わずにはいられなかった。
「前からああなんだよ。俺も初めて目の当たりにした時は衝撃だったな。自分のペースを乱されたり腹が立つことがあったら、普通であればぐっと我慢するところを、少しも我慢せずにぶつかり散らすんだ」
「さっきのも男が飛び出してきて自分のペースを乱されたから腹が立って轢き殺そうとしたと?」
「そういうこと。それに過去には、ああいうタイプだから同業のモデルに悪口を言われることもあって、その時は近くに置いてあったハサミに手を伸ばした。それで、どうしたと思う?」
「まさか切りかかった?」
「その子の髪を躊躇なくばっさり切った」
「……まじですか」
「んで泣きじゃくるその子を見下ろして笑うんだよ。あれにはぞっとしたな」
失笑する志季さんの横顔を見つめて呆気に取られる。
まだ彼女に出会ってからたったの数時間しか経っていないのに、普通にその光景が想像出来てしまった。
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