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翌日の都内で行われる大規模なファッションショーも、一日中彼女の警護につく予定だった。
時間になり家の前で待っていると、シュリさんは派手な柄のワンピースを着て現れた。耳には大ぶりのピアスをぶら下げて、顔の半分くらいあるサングラスをかけている。一般人がしていたら確実に浮く恰好もさすがサマになっている。
「ねぇ。私のメール無視したでしょ」
俺の隣りに並んで早々、彼女は不服そうに零す。
「仕事以外のメールは返信しません。何かあれば電話してください」
「電話したけどすぐに切られたわ」
「開口一番にセクハラをされたら切ります」
「セクハラ?私はただ電話でオナニーセックスしましょうって誘っただけよ。知ってる?相手の喘ぎ声が直接耳に届いて気持ちいいの」
「朝からセクハラはやめてください」
「あなたの喘ぎ声って大きそうよね。そういうのも好きだから安心して」
「……」
いや、まじで朝からうっせーわ、この痴女。夜中は電話もしつこいし、ショートメールまで送ってくる始末。何度暴言を吐きかけたか。
「おはようございます、シュリさん」
シュリさんが車に乗り込むと、今日は運転席に座っている志季さんが挨拶をする。
しかしシュリさんはちらりと志季さんを見るだけで、何も言わずに腕を組んで窓の外に視線を向けた。
自己中で我儘で、挙句に気分屋。
仕事中だから決して態度には出さないけれど、生理的に無理だわ、と心の中で呟き、そっと溜息を吐いた。
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