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しばらくして控え室からシュリさんと相良さんが出てきた。
歩き出す彼女に続き、俺と志季さんか両サイドに並んでついていく。
「シュリさん、この後打ち上げがありますがどうしますか」
「行かないわ」
「と言うと思いましたけど、どうしてもと言われているのでそこをなんとか。少し顔を出すだけでも」
「行かない」
「今回ショーを主催したデザイナーも参加するので、挨拶だけでも」
「それ以上同じ話題を振ったらピンヒールでぶっ刺すわよ」
「……すみませんでした」
苛立たしげにシュリさんが吐き出すと、相良さんはちらりとピンヒールを見て息を飲む。
相良さんも大概苦労人だよな、と思いながら、足早に歩くシュリさんに続いた。
しかし、不意にシュリさんが止まる。
つられて俺と志季さんも止まり、彼女の視線の先を目で追うと、少し離れたところに一人の男が立っていることに気が付いた。
そしてそれがすぐに見覚えのある顔だということが分かり、ちらりと志季さんと目配せをする。
それは、昨日車の前に飛び出してきて危うくシュリさんに轢き殺されそうになった男だった。
「シュリさん、下がってください」
すぐに俺の背中に彼女と相良さんを隠すようにして立ち、志季さんがその男に近付いていく。
ちらりと見えた男の手にはナイフらしきものがあり、確実にシュリさんを狙った犯行だろう。
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