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すると予想通り、男はいきなり「うわああ!」と奇声を発しながらナイフを振り上げて走ってくる。俺の後ろで相良さんがひっ!と悲鳴をあげた。
しかしベテランの志季さんにとって、たかだか一人を拘束するなんて容易なこと。
刃を避けてその手を掴み壁に叩きつけると、勢いでナイフが飛んで床に転がった。
「離せっ!クソ!離せよ!!」
呆気なく両腕を後ろで押さえられた男は、こっちを睨みながら身を捩って暴れようとする。
騒ぎに気が付いてやって来た警備の男性が合流して、志季さんと共に取り押さえた。
「シュリさん、相良さん、行きましょう」
確か反対にも出口があったはず。
念のため男を遠ざけた方がいいと判断して、静かに男を見つめているシュリさんと青ざめた顔で固まっている相良さんに声を掛ける。
「俺は悪くない!あいつが俺のことを殺そうとしたんだ!俺はただ好きな気持ちを伝えたかっただけなのに!あいつが俺を轢き殺そうとした!クソっ!離せえ!!」
しかし、拘束されながらも男の怒鳴る声が廊下に響く。
「おい!ふざけんなよてめぇ!俺がどれだけお前に金かけたと思ってんだよ!あっ!?逃げんじゃねえよ!」
更にシュリさんが無視して歩きだすと、男は必死で喚き散らした。
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