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「お前みたいなブスは死ね!消えろ!どうせ体使って男に媚びて仕事貰ってんだろ!じゃなかったらてめぇみたいなブスが売れるわけねぇだろうが!死ねビッチ!地獄に落ちろ!」
さすが車の前に飛び出すようなイカれ具合だけあって、ファンであったくせに豹変ぶりが酷い。
その暴言に不快になった矢先、シュリさんがピタリと足を止めたので「シュリさん?」と呼び掛けると、彼女はゆっくりと振り向いた。
その視線は男を捉えたかと思えば、そのまま床に落ちる。刹那、やばい、と血の気が吐いた。
"シュリさんの目につく所に凶器を置かないように"
昨日の志季さんの言葉が頭に浮かび、さっき男が手放したナイフを咄嗟に拾いあげる。
しかしシュリさんは、そんな俺をスルーして男に向かって歩いていく。その時彼女の横顔が一瞬だけ見えて、小さく息を飲んだ。
それは昨日、男を轢き殺そうとハンドルを握った時の彼女そのもの。表情にはなんの色もなく、人を傷つけることに少しの躊躇いもない、人形のような。
そんな嫌な予感を抱いた時、シュリさんは自分の髪を纏めている"何か"を引き抜いた。
「…っシュリさん!」
男に近付いたシュリさんがその手を振り上げるのを、慌てて止める。
強制的に手首を掴まれて阻止されたシュリさんは、不快そうに顔を顰めて俺を見上げた。
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