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しかし、そんな顔したいのはこっちだ。だって彼女が手に持っていたのは……
「今、何をしようと?」
先の尖った簪は、恐らくさっきのショーの時に使っていた物だろう。
それを目の当たりした俺は、眉を寄せてシュリさんを見つめた。
「何って、目を潰そうとしたの。私のことをブスだとほざくから、機能していない目はあってもなくても同じでしょう?」
「……まさか、本気ですか?」
「本気かどうかは手を離せば分かるわ」
ふ、と赤い唇が弧を描く。
しかし、その目はやっぱり笑っていない。
昨日の今日だ。嘘みたいだが、この人だったら本当にやり兼ねないとゾッとした。
すると俺が止めている間に、志季さんが男を連れて行こうとする。
次の瞬間、シュリさんは俺が掴んで押さえている方の手をパッと開いて握っていた簪を手放し、それを器用に反対の手でキャッチすると、再び男に襲い掛かろうとした。
さすがサイコだけあって、なかなか頭がキレる。
なんて感心している場合じゃなく、素早く反対の手首も掴んで止めると、シュリさんは「触らないで」と抵抗した。
「シュリさん、駄目です」
「離さなかったらあなたを刺すわよ」
「落ちついてください」
「あの男を刺したら落ちつくわ。あいつ、絶対に許さない」
「シュリさん、こっちを見てください」
「離して」
「シュリさん」
「離してって言ってるでしょう!」
「僕の目を見てください」
「いい加減にっ、」
「シュリさん、俺を見て」
「…っ、」
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