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暴れるシュリさんの両腕を掴んでしつこく言い聞かす。
するとようやく動くのをやめたシュリさんは、未だに鎮められない怒りを瞳に宿したまま、顔を覗き込む俺を見つめ返した。
「落ちついて、ゆっくり呼吸をしてください」
「無理よ。落ちつかない」
「あなたは綺麗です」
「……なんですって?」
「シュリさんは誰よりも綺麗です。だからあんな馬鹿げた悪口を間に受けるだけ時間の無駄です」
「……」
「落ちついて、ゆっくり息を吸ってください」
視線は常に絡んだまま。
まさかこのタイミングで綺麗だなんて言われると思っていなかったのかシュリさんは驚いたように目を見開き、探るように俺の左右の目を交互に見た。
頭に血が上った時、こうして少しだけ気を逸らさせるのが有効的だ。特に子供なんかは。
そうするとシュリさんの肩からふっと力が抜けて、まだ僅かに不服そうではあるものの、大きく息を吸って吐いた。
「気持ちは鎮まりましたか」
「いいえ。最悪な気分だわ。だけどあなたが私とセックスするなら発散出来るかも」
「一人でどうぞ」
「あなたをおかずに?」
「セクハラする余裕があるなら大丈夫ですね。行きましょう」
シュリさんの握っている手を優しくほどき、凶器の簪を没収する。
彼女の表情が戻ったことに安堵しつつ、どうしてボディーガードの俺がここまで面倒を見なきゃならないんだと辟易した。
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