157人が本棚に入れています
本棚に追加
だけど、本当の悪夢はここからだった。
「半年ですか?僕が?」
「ああ。こちらのクラリスの社長さんが是非にと言ってくれてるんだよ」
「いや、でも…」
会社に着いて早々上司である会長に呼び出され、会長室に入ってすぐに俺を待ち構えていたのは、会長と、会長と向かい合うようにしてソファーに腰掛けているクラリスの社長とやら。並びに、つい数日前に会ったばかりのあのサイコ女のマネージャーの相良さん。
扉の前に立っている俺は、この状況にひたすら困惑していた。
クラリスとは、クラリスプロダクションの略でシュリさんが所属している超大手芸能事務所。その社長とやらが直々にそこに座っているのだから、混乱して当然だった。
それに半年だ。サイコ女の専属のボディーガードとして六ヶ月間雇いたいだなんて、無茶苦茶にもほどがある。
既に他の依頼人からの指名でスケジュールは一年先まで埋まっているし、普通に考えて無理だということは会長だって分かっているだろうに。
「安心しなさい。今後のVIPの指名は君の代わりに志季くんを向かわせるから」
「え?志季さんですか?そしたら僕は一人でシュリさんの専属として働くということでしょうか」
「そういうことだ。なに、志季くんも優秀だからな。君の代わりを充分に果たしてくれると思うよ」
「……はあ…」
それなら志季さんのままでいいじゃん。志季さんが今まで通りシュリさんの専属としていればいいじゃん。なんでそこでトレードする必要があんだよ。俺VIPの方が断然いんだけど。あんなサイコに付き合いきれんのだけど。
最初のコメントを投稿しよう!