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そんな彼女に志季さんはずっと指名を受けているのだけど、仕事仲間達が羨ましがっているところをよく目にしていた。
「どんな人かって言ったら……うん。とりあえずヤバい」
「え?」
「彼女のことは絶対に他言するなと事務所に念書を書かされているから誰にも言えないけど、今日から光冴もシュリさんの護衛に当たるから軽く教えといてやる」
「念書、ですか?」
「とにかくヤバいぞ。彼女は本当に、色々ヤバい」
「ヤバい…」
「覚悟しとけ。まじでヤバいから」
「……それは、あの、どうヤバいと?」
「あんなヤバい人間見たことないってくらいヤバい」
「え」
「俺は三日目でこの人のそばにいるのは無理だと判断した。が、報酬が莫大だったから会長が辞めることを許してくれなかった。かれこれ二年半なんとか続いてるよ」
「……」
「お前もご愁傷様」
志季さんはうんうんと頷きながら俺の肩をポンと叩くと、「じゃ、またあとで」と告げて歩いていく。
一瞬何を言われたのか分からなくて固まったものの、ふと我に返り、「え、三日で?」と振り返る。
ベテランで責任感の強い志季さんが辞退しようとしていたなんて初耳だし、彼をそうさせたほどの"ヤバい"とは一体なんなのか。
この後俺は、彼女と対面して、その理由を嫌というほど突きつけられることとなる。
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