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目的地まで乗り継ぎを含めておよそ二十八時間かかった。
長い飛行時間にも関わらず疲れを一切見せずに空港に降り立ったシュリさんを、日本と同様…いや、それ以上の数のファンが出迎える。
花柄の黒いシフォンワンピースに着替え、長い髪は緩い三つ編みにして片サイドに流すようなスタイル。毎度アクセサリーまで細かくこだわっていて、今彼女が身に付けているものの総額が一体いくらになるのか考えるだけ怖い。
「この後はショーが行われる会場に向かい、九時から衣装チェック。その後リハーサル、夕方から本番になります。その後は明日の撮影の衣装チェックとミーティングと、夜には取材が入っています」
「どうでもいいけど加湿して。乾燥が酷いわ」
「はい」
車に乗り込んですぐにシュリさんが命じれば、端から言われることが分かっていたのか相良さんは携帯加湿器らしきものを取り出す。
日本と現地では時差があるため完全に朝と夜が逆転しているので、体内時計は夜の七時だけど、現地の時刻は朝の七時。体力的にかなりきついはずだが、休むことなくスケジュールはみっちりだ。かといって日本に帰った後も仕事が詰まっているらしく、体を時差に慣らす時間すらない。
ただついて周っているだけの俺でさえ目が回りそうなのに、その仕事量をこなすシュリさんはどれだけ過酷なのだろう。
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