サイコ的ラブゲーム

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出演者は十八歳から二十歳が多く、ドラマの内容とは反対に明るい撮影現場だった。 そんな中主演であるシュリさんが現れると、それまで賑やかだった空気がシンと静まり返る。それはシュリさんが嫌われているというわけではなく、明らかに出演者の大半が怯えているから。 普段から悪女全開のシュリさんは、そうするつもりがなくても、どこか機嫌が悪いように見えるのだろう。 そりゃあ挨拶をしても無視だし表情ひとつ変えないんだから怖いよな。 既に四話まで撮影しているものの空気が和むことなく、それどころかシュリさんが演じている役もあって、初めよりももっと距離が出来ているような気がした。 まぁ、俺はボディーガードだから外野からのんびりそれを眺めているだけなんだけど。 「どうですか。シュリさんの演技」 撮影の合間、暇なのか隣りにやってきた相良さんが話しかけてくる。最近こうして友達みたいに構ってくることが多く、一応俺も大事な仕事中なんだけどな、と思ったりする。 「素人の僕から見ても凄く上手だと思います。なにせあれだけの台詞量でこれまで一度もNGを出してないんですから、多忙なスケジュールの中でしっかり仕事をこなすところはシュリさんらしいなと」 「そうそう。シュリさんって本当に凄いんですよ。どの現場でもすぐに監督の指示通り立ち回れるし、どんなシーンも大抵一発OKですから」 「ただ、あの生徒役でリーダー格の役をしてる女の子が大変そうですね。結構NG多くありません?僕みたいな素人が何言ってんだって感じですけど」 「ああ。浅羽夏乃さんですね。あの方は子役出身で演技がとてもお上手で昔から将来を期待されていたんです。今回は恐らくプレッシャーもあるんじゃないかな。なにせまだ十五歳で、周りの先輩達を差し置いて主演並みの出番の多さですから」 「なるほど」 「若い世代の子は難しい年頃ですからね。これから生き残れるかどうかの世界ですから、互いの対抗心は凄まじいですよ。そのプレッシャーで演技が固くなってしまっているのかもしれませんね」
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