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相良さんの分析に耳を傾けながら、浅羽夏乃という生徒役の子を見つめる。まだ十五歳であるものの綺麗で大人っぽい女の子で、充分十八歳の高校生に見える。
しかし演技においては、二話目辺りからNGでカットがかかることが多くなった。台詞を忘れたり噛んだりしてしまって何度もやり直しになり、ミスすればミスするほど沼に嵌っていく。
すると同じ生徒役をしている周りの俳優の子達があからさまに嫌そうな顔をしたり、「何回目だよ」なんて悪態をつく。浅羽さん以外全員が年上なので、やはり年下がメインキャストであることに対しての風当たりは相当キツかった。
「だけど意外ですね。シュリさん、浅羽さんが間違えてやり直しになっても何も言わないじゃないですか。ハサミを向けて『次間違えたら殺す』くらい言いそうなのに」
「伊吹さんの中でシュリさんってただのイカれた人間になってますよね。まぁでも、確かにそうですね。いつもだったらNGを連発する人に向かって大きく舌打ちしたり、付き合いきれないからと勝手に途中で帰ったり、台詞を間違えても悪びれない大御所俳優に向かって『痴呆が始まっているのなら大人しく隠居してれば?』と言い放ったり。平然と現場を凍らせるんです」
「相良さん……本当に大変ですね…」
「僕の苦労を分かってくださるのは伊吹さんだけです」
その状況を想像して思わず同情すれば、相良さんは疲れたように笑う。きっとシュリさんがやらかす度に相良さんはぺこぺこと頭を下げてきたんだろう。
そしてこうして話している間も、浅羽さんとシュリさんの掛け合いのシーンで浅羽さんが台詞を間違えてカットがかかったのだけど、シュリさんは特に表情を変えることなく次のテイクに臨む。
すぐに頭に血が上ってキレそうなあのシュリさんが大人しいことは、やはり違和感しかなかった。
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