サイコ的ラブゲーム

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その後の数日間も浅羽さんのNGは続いた。日に日に周りの俳優の子達の態度は酷くなっていき、遂には監督もスタッフ達もあからさまに溜息を吐く始末。 何より見ていて苦しくなったのは、教室での何人もの生徒が絡むシーン。激しく台詞が飛び交う中、浅羽さんが五回連続撮影を止めてしまった。 彼女が今にも泣きそうな顔で「すみません…」と呟く姿は、関係のない俺でも居た堪れなくなるくらいだ。「まじでいい加減にしてくんないかなー」「予定通り撮影終わんないの誰のせいだよ」という皮肉があちこちから聞こえる。 「シュリさん入ります」 そんな中次のシーンの支度を終えたシュリさんがスタジオに姿を見せれば、益々空気がピリッとして緊張感が強まる。 「すみません、シュリさん。撮影が押してて…」 スタッフがおずおずと声を掛けると、シュリさんはその顔を一瞥した後、無言のまま用意された椅子に腰掛ける。脚を組み両腕を組む様子は監督よりも偉そうだ。 俺はその横に立ち、しっかり警護しつつも撮影シーンを眺める。再び浅羽さんのNGだ。 「なあに?」 するとぽつりと呟く声がして、シュリさんの方を見ると、俺を見ているシュリさんが「今私のこと見たでしょう?」と尋ねてくる。 「見てないです」 「見たわ、チラッと。私、常に神経をあなたに集中させてるの。誤魔化すってことは私のことを無意識に意識してるってことでいいかしら?」 「……怒らないのかなと思いまして」 「怒ってるわ。私の光冴をジロジロ見て頬を赤らめている周りのメス豚共に」 「じゃなくて、撮影が押してることに対してです」 よくもそんなにもぽんぽん口が回るものだ。呆れながらもシュリさんをチラ見した本当の理由を口にすれば、シュリさんは「ああ」と頷いて撮影現場に視線を戻した。 厳密に言うと、NGを出して更に撮影を遅らせてしまっている浅羽さんに対して怒らないのか、という疑問だ。
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