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しかしその容赦のなさが霜月エリらしいということで無事一発オーケー。
ただ相良さんは相手側のマネージャーにペコペコ頭を下げていたけれど。それなのに隣りでシュリさんが「手が痛いわ」と言い放ったおかげでその謝罪はまったくの無意味だった。
今日のスケジュールを全て消化して、帰り支度を終えたシュリさんと相良さんと並んで帰路につく。
すると先程の謝罪からずっと沈んだ顔をしている相良さんが、「はあ…胃が痛い」と溜息を落とした。
「相手に気を遣ってばかりいるからよ。少しは強気で生きてみたら?」
「……そうですね」
「そんなことより早く車を下に回して」
しかし相変わらずのサイコ女王様は少しも労わることなく、それどころか今の台詞だ。
一体どの口が言ってんだこのクソ女……。ちらりと俺を見た相良さんの顔がそう訴えていて、思わず苦い笑みを零してしまった。にしても、まじでシュリさん外道だな。
言われた通り車を用意すべく相良さんが一足先に歩いていく。
そして、その後ろ姿が廊下から消えた時だった。
「え?シュリさん、」
徐ろにシュリさんが踵を返して歩きだしたので、不思議に思いながら声を掛ける。エレベーターはそっちじゃないのに。
だがシュリさんは足を止めず、こうなったらもちろんついて行くしかないので後を追い掛ける。高いヒールを履いているとは思えないようなスピードで、すれ違う人達が何事かと顔を見合わせていた。
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