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そんな観察は一瞬。「あの…シュリさん?」と、俺の腕を掴んだまま動かない彼女に声を掛けた。
その目力の強い双眸が真っ直ぐに俺を射抜く。それも、瞬き一つせず。
どうすればいいのか分からずちらりと志季さんを見るものの、志季さんは小さく首を横に振るだけだった。
仕方なくシュリさんを見下ろして、何かアクションを起こすのを待つ。謎だ。まじで謎過ぎる。
そして、まるで吟味するようにシュリさんの目が俺の左右の目を交互に見ていたかと思うと、ようやく彼女の唇が動いた。
「あなたとのセックス、最高に気持ちよさそう」
「………………はい?」
「穢れのない目をしてる人ほど、一回火がつくと猛獣みたいになるのよ。本能のままのセックス、最高だわ」
「……」
「私達、すごく相性がいいと思うんだけど。どう?私に抱かれてみない?」
ずいっと一歩前に進み出たシュリさんに気圧されて、自然と一歩下がる。
何を言われたのか分からず目を見開いて固まる俺の視界には、綺麗に口角を上げて微笑むシュリさん。
しかし、すぐにその表情に違和感を覚えた。というのも、微笑んでいるはずなのに、その目がちっとも笑っていないから。
感情が見えない瞳は、無機質なガラス玉のよう。
「はーいシュリさん。車が待ってるので行きますよ」
その声にはっと我に返ると、相良さんが俺とシュリさんの間を割るように入る。
続けて「では行きましょうか」と告げた志季さんが背後にあるドアを開けたので、シュリさんの道を開けるように俺も身をどかした。
するとシュリさんはチッと舌を打ち相良さんを睨むと、サングラスを掛け直し長い髪を手で後ろに払いながら歩き出す。
未だに彼女が発した台詞が処理出来ず混乱していたものの、とりあえず今は業務に集中しようと、後に続いた。
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