サイコ的ラブゲーム

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シュリさんを守らなければならないと思う一方、シュリさんが母親に対して冷静に言い放った言葉に、そういうことか、と納得した。 浅羽さんは怯えていたのだ。演技が終われば息をつく間もなく責められて、この様子だと家に帰った後も追い詰められ続けるのだろう。 当の浅羽さんはというと、まさか気付かれると思っていなかったのか、目を見開いてシュリさんを見つめている。 「あなた今、腹が立って私に掴み掛かってきたわよね。だけど彼女はあなたにどんなに理不尽に責められても、どんなに殴られても、掴みかからない。今の様子からするに、これまでもずっとそうだったはずよ。なぜ彼女は我慢していると思う?」 その静かな問い掛けに、母親は眉を寄せて固まる。「そんなことも分からない?」と続けてシュリさんが問えば、母親の目が動揺するように揺れた。 それからいつまで経っても口を開こうとしない母親に、シュリさんはうんざりしたように溜息を吐いた。 「彼女があなたに逆らわないのは、この世に生まれた瞬間から、親に対して無償の愛を抱いているからよ。例え罵られようと、苛立ちをぶつけられようと、子供は親を愛し続けるように出来てるの。親が先に歩けば必死に後をついていくし、親に八つ当たりされて悲しくて泣いた後も、心を抉られるような言葉をぶつけられた後も、抱きしめられれば何事もなかったみたいに笑うのよ」 「……」 「そんな無償の愛を与えられていることに胡坐をかき、本来愛すべき存在である子供を自分の都合よく振り回す。あなたはそうやって彼女を洗脳して支配してるのよ」 「……うっさい…」 「……」 「うっさいのよ!何も知らないくせにえらそうに言わないで!」
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