サイコ的ラブゲーム

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核心をつかれて、頭に血が上ったのか。 母親はそう叫ぶや否やシュリさんに向かって手を振りかざし、そのことに焦った浅羽さんが「お母さんやめて!」と声をあげる。 しかし、シュリさんの方が一足早かった。母親の髪を両手で掴み、ブチブチと髪がちぎれるのもお構いなしに思いっきり引っ張る。 咄嗟にシュリさんを守ろうと動いていた俺は、まさかの行動に衝撃を受けて止まってしまった。 シュリさんは、痛みに顔を歪めながら悲鳴をあげる母親を雑に床に放り投げると、「教えておいてあげるわ」と口を開いた。 「この部屋にカメラを置いておいたの。だからこの数日間、あなたがここで彼女にしていた虐待の映像が残ってるのよ」 「…なっ、」 「それをマスコミにでも流せば、世間は必ず彼女の味方をするわ。何より彼女は子役時代からずっと親の支配下にあったと同情されやすいもの。そうなるとあなたの事務所の評判はガタ落ちね」 「……」 「だけど安心して?私、基本的に自分以外の人間はどうでもいいの。あなたがこれから先彼女を一俳優として敬い、娘として傷付けず大切にするのなら、何もしないわ。……できる?」 手を後ろで組んで母親を見下ろしているシュリさんの顔には笑みが浮かんでいるが、相変わらずその目は少しも笑っていない。 まさか映像を録られていると思っていなかったのか母親の顔は青ざめていき、反撃しても敵わないことを認めたのか、力なく頷いた。
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