サイコ的ラブゲーム

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それからもなかなか喋ろうとしない浅羽さんに、シュリさんは辟易したように目を細める。そしてずかずかと浅羽さんの前まで歩いてくると、腕を組んで浅羽さんを見据えた。 「あなたにこれあげる」 「……え?」 「うちの事務所の社長の名刺。話通しておいてあげるから、もし今の状況から抜けだしたいなら連絡すればいいわ」 「……」 「大丈夫よ。これまで散々虐げられてきた人間はね、勇気を出して自分の足で立った時、目の前にはもう怖いものなんてないの」 「……シュリさん…」 「あなたの人生だもの。このまま自分を殺して生きるのか、自分を愛して生きるのか、決めればいいわ」 相変わらず素っ気ない言い方だけれど、すっと目の前に差し出した名刺とその言葉は、意外にも浅羽さんを励ますためのものだった。 ……いや。震える手でそれを受け取った浅羽さんにとっては、励ます以上に意味があるものだったのかもしれない。 シュリさんと名刺を交互に見る瞳にはじわじわと涙が滲んでいき、それを堪えるようにぐっと唇を噛む。もしかしたら、それは初めて差し伸べられた救いの手だったのかもしれない。 しかしそれ以上慰めることなく、「じゃ、また」と告げてさっさと踵を返すところはシュリさんらしい。 余計なお節介かもしれないが、「これ使ってください」と浅羽さんにハンカチを渡してから、先に部屋を出て行ってしまったシュリさんの背中を追いかけた。
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