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廊下に出ると、そこをうろうろしていた相良さんが顔面蒼白で駆け寄ってくる。
「シュ、シュリさん!どうしてどこにもいないんですか!っていうか何もしてないですよね!?誰にも何もしてないですよね!?」
「どうして私が何かする前提なの?」
「あっ、す、すみません!気が動転して…」
「したわ」
「…えっ!?した!?」
「ええ。髪を引っこ抜いただけだけど」
「!?!?!?」
シュリさんがさらりと告げた爆弾発言に、相良さんは声にならない叫びをあげながら俺の腕をガシッと掴んでくる。
「ど、どどどどうして伊吹さんがついていながら!」
「だから僕ただのSPなんですけど」
「一体どういう状況で何がどうなって……あああ!やっぱり言わないでください!怖い!聞きたくない!」
「浅羽夏乃の母親の髪を引っこ抜いたの」
「ノオオオー!!!」
血も涙もない女だ。相良さんは両手で頭を抱えながら狂ったように雄叫びをあげる。
シュリさんはそんな相良さんを横目に俺の腕に手を絡ませると、「ね、あんなアホは置いて二人で帰りましょ」と他人事だ。
すぐにその手を引き剥がし、またくっついてくるから引き剥がす。そんな攻防を繰り返しつつ、「知ってたんですか」と口を開いた。
「浅羽さんがNG連発する理由」
「そうね。なんとなく」
「あの部屋でいつも浅羽さんが責められていたのも知ってたんですか」
「そうね。気になってついて行ってみたらたまたま」
「だからカメラを置いておいたんですか」
「あれはただのハッタリよ」
「え、ハッタリ?」
「あんな風に脅してあげば、きっとしばらくは彼女に対しての当たりは緩くなるんじゃないかしら」
「……」
「そんなことよりお腹空かない?帰り食べて行きましょうよ」
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