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建物の外に出ると、そこには大勢のファンが出待ちしていた。
警備員がガードして近寄れないようにする中、シュリさんは車に乗り込む。運転席には専用のドライバーが座り、助手席に志季さん、後部座席に俺とシュリさんという位置付けだ。相良さんは事務所に戻るらしく別行動。
乗ってすぐにカーテンを閉めたシュリさんは、特にファンに顔を見せることはしないらしい。サングラスを掛けたままスマホをいじり始めた。
車がゆっくりと動き出す。
しかしそれからほんの数秒後、突如急ブレーキを掛けて勢いよく停止した。
何事かと、素早く確認する。
その原因は、一人の男が車の行く手を阻むように飛び出してきたからだった。
「シュリちゃん!愛しいシュリちゃん!シュリちゃんに会いたくて遠くから来たんだよ!シュリちゃん、顔を見せて!」
男はどうやら熱狂的なファンらしく、車にしがみついて叫んでいる。すかさず警備員が駆け寄って取り押さえようとするけれど、暴れて振り払った。
「どうしますか?」とドライバーが尋ねると、「僕が行きます」と志季さんがシートベルトを外す。
しかしそんな中、「いいわよ面倒臭い」と口にしたのは、こんな状況にも関わらずやけに落ちついている彼女だった。
「不快だわ。轢き殺して」
更にシュリさんは淡々と告げる。
思わず耳を疑い、僅かに目を見開きその横顔を見た。
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