1.願い

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住み込みで両親からの信頼度が厚いメイドの佐野(さの)さんに問いかけると、佐野さんは何処か悲しそうな()をして口を開いた。 「兎白(とはく)坊ちゃん。貴方のご両親は、お仕事のため森を離れるのです。そして、坊ちゃんを家に残すのは、貴方を守るためなのです。どうか、ご両親様の気持ちをご理解ください。」 「分かんないよ。危険なら、わざわざ外で仕事しなくたっていいじゃん。父さんも母さんも、大人はずるいよ!好きな時に好きな場所へ行けてずるい!」 僕はそう言うと屋敷を飛び出した。走っても走っても、緑は何処までも続く。 一本道の道路を目印に走り続けると、大きな壁が僕の目の前を(ふさ)いだ。 その壁は、僕を森から出さないためのものだと思った。門は固く閉ざされ開かない。 「僕だけ独りじゃん。」 緑の上座り込み、そして空を見上げる。 何処までも続く青空には、鳥達が自由に飛び回っていた。 「坊ちゃん、そろそろ暗くなりますから戻りましょう?」 どれくらい空を見上げていた? 気付くと空は、オレンジ色に姿を変え、佐野さんが僕を呼んだ。
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