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その日の晩。雨風が強く、窓を叩きつけるような音が鳴っていた。
あの猫、拾われてよかったな。とそんなことを考えていると、ゴロゴロ…と雷の音まで聞こえ始める。
「………」
すぐにベッドから起き上がり、廊下に出る。
真っ直ぐエマの部屋へと向かい、辿り着くとコンコンとドアをノックした。
「エマお嬢さま」
返事はない。
なんとなくどんな状況かは想像できるけど。
「大丈夫ですか?」
相変わらずドアの向こうからは応答がなく、「失礼します」と開けさせてもらう。
部屋の1番奥。案の定、ベッドの上の布団がまん丸く盛り上がっていた。
「お嬢さま。ノアです」
「…、……て…」
「…何ですか?」
「、こっち、来て…っ」
余裕のない、震えた声がくぐもって聞こえてきた。
行ってやりたいのは山々だけど、今の時間は22時。この時間俺はエマの部屋に入れない。ここに来た頃、旦那さまと約束してる。
「何度も伝えているように、俺、夜はここに入れないです」
「っ…〜っ…」
「…こっち、来れますか」
ドン!と雷が落ちた音に、ベッドにいるエマが飛び上がる。
震えているのがここからでも分かって、どうにかしてやりたいけど、来てくれなければ何もできない。
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