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そして教室に着いても、陰湿な嫌がらせは続く。
私の机。
デカデカと油性マジックで書かれた乱雑な文字。
“税金返せ!”
「………」
さすがに、これは、きつい。
ブス!死ね!の方がまだマシだ。
私の悪口なら、全然いい。
…でも、今の状況で、パパのことを言われるのは…つらい。
何も、知らないくせに。
「ふーん?」
じわりと涙が滲んだところで、隣にいるノアが抑揚のない声で言う。
「おもしれぇこと書いてくれんじゃん」
言う割に、その声は低い。
ガタンと椅子を引いて、隣り合った自分の机の中に私の教科書を移していく。
「…ノア…?」
「気に入ったから交換しようぜ」
「………」
淡々としたその口調。
…ノアが怒っているのが分かって、黙ってそれに応じた。
軽々机を持ち上げて、私の落書きされた机と、自分の机を交換してくれる。
ありがとう、とは言えなくて俯いていると、また聞こえてくる、悪魔達の声。
「……ほら、何も言い返さないじゃない」
「やっぱり本当なのね」
人間は怖い。
どうしてここまで、無情になれるのか。
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