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「絶対やってるに決まってるじゃない。そういう顔してるもの」
「私たちの税金で無駄に高いお給料のくせに、政治家っていうのはどうしてこうも欲深いのかしら?」
「本当、そんな罪人の娘が同じクラスだなんて、」
───ガタンッ!!
そんな大きな音が響き、一瞬で教室内が静まり返った。
音の犯人である隣の男は、机を蹴り飛ばした足を元に戻し、腕を組んで彼女達を見据える。
「…主人への侮辱は、俺への侮辱と取るけど?」
じろ、と色のない瞳がその場を凍らせる。
血の気が引いている彼女達。
今までずっと軽く流していたノアがここまで怒るとは思わなかったらしい。
横たわった“税金返せ!”の私の机。交換したからノアの机になってたけど、普段から何も机の中に入れない奴だから、それはそれは軽々遠くまで飛んだ。
(…前に誰もいなくてよかった)
いそいそと机を取ってきてノアの目の前に戻す。
そんな私の行動を見て、何やってんだよ、とノアが不服そうな顔をした。
「…危ないでしょ」
「当たり前だろ。あいつらに当たればいいと思ってやってんだから」
「………」
再びノアに視線を向けられた彼女達はびくりと身を震わせ、もう授業が始まるというのに、逃げるように教室を飛び出して行った。
ふん、と鼻を鳴らすノア。
…滅茶苦茶だけど……胸がスッとした。
私はいつも、何も言い返せないから。
私が心が折れないでいるのは…ノアがいてくれるから。
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