その男、使用人。

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学校の唯一の友達、親友であるマキは今日はお休み。風邪を引いたらしく、今朝ラインが入っていた。 (お昼ご飯ぼっち確定だし、屋上にでも行こ) 家政婦さんが作ってくれたお弁当を手に、早足に教室を出た。 階段を登って屋上に出る。 意外と穴場らしいここは、今日も誰もいない。 (やったぁ貸切〜) なんて呑気なことを考えていると、ビュンッと風が吹き一瞬で身が凍りそうになった。 ……穴場じゃない。冬だから誰もいないんだ。 そりゃそうか、と納得しながらもここから移動しようとは思わなかった。 教室に戻ったって、また嫌がらせされるだけだ。この前なんてお弁当ひっくり返されたし。あれは殺意だったなぁ… 今日は守られた、いつも手の込んだお弁当。家政婦さんの中でも一番古株の、頼子さんという人が作ってくれている。 白ごはんの上に乗っているくまさんの形をした海苔に頬を緩めながら、ミニトマトを口の中に放り込んだ。 1人で食べるお弁当は、変わらず美味しいけど、でもやっぱり少し寂しい。マキ、明日は来るかなぁ… 考えながら唐揚げに箸を突き刺す。 口に入れるはずだったそれは、寸前のところで別の場所へと消えた。 目を見開けば……なぜか隣に、口をもぐもぐ動かしたノアがいる。もちろん横取りの犯人はこいつだ。 「なんでいるの…」 怒ることを忘れて尋ねれば、ノアはなんてことない顔。 「今日は奢ってくれる女の子がいなかったので、エマお嬢さまにたかりに来ました」 「はい?」 「どうか私めに食い物を…」 「い、いやお弁当一個しかないし…」 「嘘だよさっき適当に食った」 急な茶番は急に終わりを告げた。 ドサ、と後ろに両手をついて私の隣に座り直したノア。本当に何しに来たんだ。
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