その男、使用人。

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───瞬間、奴の空気が変わる。 「お前なぁ」 ……きた。 隣の男の顔から、先ほどまでの貼り付けた笑みが消える。 「………なによ」 冷えた瞳が横目で私を見下ろせば、ぞくりと震えてしまうのはなぜなのか。 表情だけで周りの気温さえ下がった気がした。 ちっと舌打ちをして、私の顔を覗き込むその表情は、面倒くさそうであり淡白だ。 さっきとは、まるで別人。 「胸でけぇって言っただけじゃん。褒め言葉だろ」 「〜〜っっ」 綺麗な唇から放たれるそんな言葉に、かぁっと顔が赤くなる。 (もう、ほんとにほんとにほんとに…!) 今朝、着替えを見られた時、奴がぼそっと「…胸でか」と視線を送って来たのを見逃さなかった。 怒ってるのは、それでだ。 着替えを見られたというだけではない。 「っ最低!!」 「はいはい」 「この猫かぶり!!」 「お前がガキの頃言ったんじゃん。家の者がいないときは素でいいって」 「〜っこんなことになると思わなかったの!」 昔、たしかに言った。 でもあれは子供の頃の話で。 あの頃はここまで性格ひん曲がるとは思ってなかった。 ただ敬語が取れる程度のものだと…
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