衣織珀斗という男

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「あーやっぱツーショットは駄目ですね。キラさんの顔面が強過ぎて、俺ただの邪魔者にしかならないですもん」 「何言ってんの。それ言うなら僕の方が邪魔でしかないよ」 「何言ってんですか。世界遺産級の美形のくせに」 「いや、今回ばかりは僕も言わせてもらうけどね、珀は自分のことを分かってなさ過ぎるんだ」 「分かってないのはキラさんでしょ」 「いーや、違うね。珀は自分がどれほどイケメンなのか理解してない。例えば僕は奥二重で涙袋もないけど、珀は綺麗な二重で涙袋があるし、目はくりっとまん丸で目力が強い」 「や、キラさんこそまじでなんっっっも理解してないですね。キラさんは奥二重でも目は切れ長だし、大きな瞳がまたチャームポイントなんですよ。二重が持っていない奥二重のクールさと、まつ毛が長くてぎっしりだから色っぽさも兼ね備えている、イケメンの中でも類を見ない至極稀な目をしているんです」 「……え、あ……や、そんなことは」 「それとキラさんの最強の特徴は、その美しい鼻にあります。東洋人離れしている高さと鼻筋が綺麗過ぎて、もはやコンピューターグラフィックで具現化したような完璧な横顔と、正面から見ても彫刻だと言われるほどの人間離れした美貌を持っているんです。その目鼻立ちに加えて、キラさんの輪郭は」 「ちょ、ちょっとストップ」 「……」 「……もういいよ、分かったから」 「いや、まだ全然言い足りないんですけど」 「や、ほんとに……もう勘弁して」 今日こそは僕なんかよりも珀の方が格好いいことを証明しようとしたのに、早々に気持ちをへし折られた。 珀の口にした僕の特徴は明らかに盛り過ぎているし、全然まったく当てはまっていないのだけど、そんな真剣に語られたら無性に恥ずかしくなってしまって。 そもそもコンピューターグラフィックとか彫刻とか、よくそんな表現がすらすらと出てくるものだ。 「……絶対珀の方がイケメンのに」 「まだその議論続けます?」 「ううん、しない。歌詞考える」 問い掛けてくる珀に慌てて首を横に振ると、珀は「やった、俺の勝ち」と子供みたいに嬉しそうに笑う。 その若干タレ目がちになる可愛い笑顔に心を奪われるファンが、世界中にどれほどいるのだろうか。僕なんかよりも遥かに多いだろうに。
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