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「トト、タクシー拾うまで頑張って歩いてくださいよ」
「んー」
「置いていけばいんじゃね」
「そんな殺生な…」
相変わらず塩対応なニニは、「月島さんに送っとこ」と、たった今撮った写メをマネージャーに送信する。
そこで月島さんの許可が降りたらそれをLOVIDIの公式SNSにアップするのだけど、結構ふざけた写メでも月島さんがOKしてしまうから、ファンの人達からは『LOVIDIの公式お茶目で好き』とか言われたりする。
「あ、イオ」
「……え?」
すると突然前を歩いていたニニが足を止めて、その口から飛び出したのは、一瞬耳を疑うような台詞。
トトを抱えたまま顔を上げた僕は、そこに立っている人を見て「あ」と呟いた。
黒いトレーナーに黒のスキニーパンツに、頭には深いバケットハットを被り、マスクをつけている。完全に変装用の姿だけど、そのスタイルの良さはまったく隠し切れていなかった。
前方からやって来た珀は、僕と視線が絡んだ途端一瞬だけその目をスッと細めた……気がしたのだけど、「お疲れ様です」といつも通りの様子で挨拶をしてきたので、多分気のせい。
「おー、おつかれ。何?今日実家泊まるんじゃなかったん?」
「姉ちゃんが明日休みならとりあえずショッピング行くよって案の定たかってきたんで、飯食ってから逃げてきました。そしたら宿舎に誰もいなかったんで、ここかなって思って」
「ふぅん……それで?心配でわざわざここまで来たんだ?」
「……フジさんが潰れてるだろうなと思って心配で来ました」
なぜかにやにやしながら質問するニニに、珀は少しだけ嫌そうに眉を寄せて答える。
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