衣織珀斗という男

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そんな二人を不思議に思いながら見ていると、珀は「ほらフジさん。俺が運んであげるから掴まってください」と、僕の肩に回っているトトの腕を半ば強制的に引き剥がした。 「えーやだーキラがいいー。キラとくっついて帰るー」 「ぶっ殺しますよ」 「すみません」 あんなにも僕が言っても聞かなかったくせに、トトは珀に対しては聞き分けが良く、すんなりと離れていく。 っていうか、最年長が最年少に怒られるって面白いな。 「わざわざトトの介抱をしにくるなんて、珀は優しいね」 「別にそういう訳じゃないんですけどね」 「え?」 「それより、キラさんは酒飲んでないですか」 「あ、うん。今日はずっとコーラ飲んでた」 「ならいいですけど。っていうかフジさん、自分で歩けるでしょ」 「あ、ひどい」 ここまで来ておいて結局運ぶのが面倒臭くなったのか、珀は無情にもトトを放り出す。 そして珀は僕の腕に腕を回してくっつくと、「行きましょ」と促して歩き始めた。 「ニナ〜あの子ひどい〜」 「仕方ないですよ。基本的にイオはキラ以外のやつとくっつかないですもん」 「ってかニナは何してんの?」 「写メ撮ってます。ファンのためにkioraのツーショットをたまには供給してあげないと」 「あ〜kioraはめちゃくちゃバズるよな。まじで人気過ぎ」 「そりゃ世界一のイケメンと五位のイケメンですから。絵になりますよ」 「な。二人の綺麗な顔が並んでるの見ると俺もドキドキするもん」 後ろで写メを撮る音と、トトとニニの交わす会話が聞こえてきて、内心では、またそれか…とうんざりする。 というのも、kioraに対してではなく、世界一のイケメンがどうとか言われることに対してだ。
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