衣織珀斗という男

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「キラさん、明日何します?」 宿舎に戻り、お風呂に入って寝る準備をすべて済ませてからベッドに座って歌詞を考えていると、珀がそう尋ねながら部屋に入ってきた。 三年目になって部屋変えをしたことで同部屋になったニニは、珀が入ってきても気にすることなく、ベッドに寝転がって携帯をいじっている。 珀がこうしてこの部屋に来ることは毎日のことなので、今更気にならないのだろう。 ちなみに部屋の構成的には、壁にくっつくようにしてニニのベッドが置いてあって、それと対になるように反対側の壁に僕のベッドがくっついている。 珀とサヤさんの場合は、ここよりも部屋が少しだけ狭いために二段ベッドだ。 「明日は幹さんに呼ばれてるから事務所に行くよ」 「何時くらいですか」 「十時かな」 「じゃあ俺も行きます。終わったら一緒に外で飯食いましょ」 「あ、でも、その後トレーニングする」 「じゃあ俺もトレーニングします」 「そう?じゃあ一緒に行こっか」 話しながらベッドに乗ってきた珀は、壁に寄りかかっている僕の横にあぐらをかいて座ると、僕の肩に頭をもたらせてスマホを触り始める。 その至近距離のせいで、珀が愛用しているシャンプーやボディローションの柑橘系の爽やかな匂いがふわりと香った。
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