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「そういえば、家族はみんな元気だった?」
「はい。もうめちゃくちゃうっさかったです。特に姉ちゃん。今もグループラインで薄情者って叫んでます」
「ああ、珀が泊まらずに帰っちゃったから?」
「いや、別に欲しい物をねだられるのはいいんですけど、アウトレット行きたいとか言われても。しかも明日日曜ですからね」
「あー…それはさすがにまずいね。珀、すぐにバレてパニックになるよ」
「あと、ほら、姉ちゃんってキラさんの大ファンだから」
「ああ、うん。そうみたいだね。ありがとうございます」
「だからキラさんのことを教えろとか、電話しろとか、会わせろとか、とにかくしつこいんですよ。それから逃げてきたんで、俺のこと薄情者だって騒いでるんです」
「……なるほど」
話している間も、次から次へと珀の携帯はメッセージを受信し続けている。すべて璃乃さんの恨み言だろうか。
僕のファンでいてくれることはありがたいけれど、そのことで珀が追い詰められているのだとしたら、なんだか申し訳ない気持ちだ。
「僕なんかで良ければ電話するよ?」
「……あー、じゃあそのうち」
「いいの?今なら全然出来るけど」
「今はいいです。……あ。じゃあちょっと写メ撮っていいですか?」
「写メ?別にいいけど」
なぜかこのタイミングでそれを求めてきた珀は、インカメに切り替えた画面に僕と自分が映るようにとスマホを構える。
「あ、でも僕、メイクとかなんもしてないけど」
「大丈夫です。キラさんはメイクありだと美しさが増して、メイクなしだと可愛さが増すので」
「いや、美しさって……それに男なのに可愛いとか言われても」
「はい撮ります」
僕の話をはなから聞く気もなく、珀は僕の頭に頬をくっつけると写真用に微笑を浮かべる。
一応写真を撮られることには慣れているので、咄嗟に反応した僕もカメラ目線をした。
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