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それから集中して歌詞を考えていると、「キラ、俺寝るから電気消していい?」と、ニニが声を掛けてきた。
「あ、はい。もちろんです。……え。もうこんな時間なんですか」
「俺も本読んでたらいつの間にか二時過ぎてた。ってかイオ、完全に寝てんな」
夜中の二時を指している時計を見てから視線を下げると、いつの間にその体勢になっていたのか、あぐらをかいている僕の太腿に頭を乗せて寝転んでいる珀がいる。
その体勢は寝にくいだろうに、割とどこでも寝ることが出来る珀にとってはそこまで苦じゃないみたいだ。
「あーあ。気持ち良さそうに寝ちゃって。膝枕で寝るとか甘えたの彼氏かよ」
「いや、彼氏っておかしいでしょ」
「そう?さっきの言い争いなんて、お互いのことが大好きな恋人同士がいちゃついてるようにしか見えなかったけど」
「……」
「じゃ、おやすみ」
僕が言葉を失って固まる間に、ニニはふ、と口元に笑みを浮かべると、電気のスイッチを押す。
部屋は暗くなったものの、僕のベッド横のスイッチだけがついている状態だ。
ベッドに潜り込むニニから、自分の手元のノートに視線を戻し、それからちらりと珀の寝顔を見た。
確かにニニの言う通り、こんな風に珀が僕にくっついてくる様子や僕達の距離感を見れば、仕事仲間の領域を遥かに超えているように見えるだろう。
だけど、僕はちゃんと分かっている。
珀が僕に甘えてくるのも触れてくるのも、それは全部仕事のためなんだって。仕事以外で一緒にいようとするのも、仲の良さをアピールしているだけに過ぎないんだって。
そうじゃなければ、こんな風に恋人だと言われてしまうような態度をとる理由なんて他にないのだから。
……そもそも男同士で、なんて。ありえないだろ。
そう心の中で呟き、小さく溜息を吐く。
それは今だけじゃなく、これまで何度も自身に言い聞かせてきた言葉。
そうやって僕は、珀に触れられる度に、勘違いしそうになる自分にストップをかけてきた。
その行動に深い意味はない。分かってる。
もう一度頭の中でそれを繰り返した僕は、無防備に僕にくっついて眠る珀の頭を撫でたくなる衝動を抑えて、再び歌詞作りに没頭した。
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