底なし沼

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ちょうどお湯も沸いたから、コーヒーを淹れてタルトのお皿も用意する。 運ぶのを彼方が手伝ってくれて、「ありがとう」とお礼を言うと、ポンと頭を撫でられた。 あぁ…なんだか、すごく幸せ。 再会した当時からは考えられない。 2人でタルトを食べながら、まるで恋人同士かのような時間を噛み締めた。 話しかけると、彼方が返事をしてくれる。それだけのことがこんなにも嬉しい。 「なんか、不思議な感じ…」 「何が?」 コーヒーを飲みながら、彼方が首を傾げる。 その仕草だけでもキュンとしてしまう。 「祥太郎以外が私の家に来るの、初めてだから」 幸せボケして余計なことを言ってしまったと気がついたのは、彼方の空気が変わったから。
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