限界

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「…おい誰だ。まったく乗り気じゃないやつ呼んだのは」 「なんかそのへんで死んでたから拾っといた」 「おいおい大丈夫かよ。あれ真白?サークル来んの自体久々じゃね?」 「真白おいでー。何があったか知らないけど、パーっと飲んで忘れよ?」 美人な女の先輩によしよしと頭を撫でられ、体を起こされる。 ボサボサになった髪の毛を直してくれたかと思えば、すでにほろ酔いなのか、ぎゅーっと抱きついてほっぺにちゅーされた。 「可愛いなぁ真白はー、癒されるー」 「………」 「小動物っぽいよな」 「………」 「ひまわりのタネを口いっぱい詰めたハムスター」 「………」 「いや足にくっついてくる子犬じゃね?」 「………」 「真白?」 「………」 「おーい」 「………」 「………あ、春くん」 「っえ!!!」 「「あ、喋った」」 思わず反応してしまうと、みんなにケラケラ笑われた。 もちろん春野くんがいるなんて嘘で。 恥ずかしくて顔が真っ赤になる。 「何かあったの?最近仲良さげだったのに」 「………」 「私たちも最初は躍起になってたけどさー、春くんサークルの子とは遊ぶ気ないみたいで、すっかり観賞用になったよね」 「………」 「でも真白にはなんたかんだ構うよね、って、慰めるんだぞ、おーい」 「………はい…」 「まぁまぁ、話さなくてもいいからさ。せっかく久しぶりに来たんだから、気分転換しよ?」 ね?と優しく頭を撫でられて、つい我慢していた涙が顔を出してしまう。 「うううぅぅ…っ」 「よしよし。俺も撫でてあげる」 顔を手で覆っていると、反対側からアルハラ先輩にもポンポンされた。 するとすかさずその手を払いのける美人先輩。 「アンタは触らないで」 「なんでだよ!」 「ちょっと真白のこと狙ってるの知ってるんだから」 「っおい!バラすな!」 ドッと笑いが起きて、いろんなところからの野次でまた騒がしくなる。 少しだけ気分が明るくなった。 …そうだ。悩んだって仕方ない。 一方通行でもいいから好きでいたいって、自分で決めたんだから。 へこんでメソメソするくらいなら、どうやったら彼に好きになってもらえるのか考えよう。 『真白は、もう少し賢くなった方がいいんじゃない?』 とりあえず… もう少し知的で賢い女にならなくては…
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