限界

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だいぶ食べ進めたところで、祥太郎がポッキーを咥えたまま、定規ちょうだい、というジェスチャーをしている。冷静すぎる。おい、お前ちょっとはドキドキしろよ。 私1人焦っているのがなんだかムカついてきて、目を閉じてがぶっと一口食べてやった。 その瞬間、お菓子でも定規でもない感覚がかすめる程度に唇に触れる。 ──え…… 「あら」 「きゃーっ!」 「おっとぉ?!」 途端に周りが騒がしくなって、状況を理解する。 「〜〜っっ」 さすがに動揺して口からポッキーを離し、ひっくり返るようにして祥太郎から離れた。 しかし目の前の奴はスン、と冷め切った顔で残りのポッキーをボリボリ食べている。 「俺のファーストキス…」 「っえ?!」 「いや嘘だけど」 「〜っ…!」 「急に食うなよ、ぶつかっただろ」 なんともない顔で「アウトすか?むしろセーフ?」と先輩たちに聞いている。 「セーフ!」 「ナイスハプニング!」 「あーおもろー神回すぎんだろ〜」 他人事だと思ってケラケラ笑っているみんな。 なぞの罪悪感に見舞われている私。 …いや…彼方とは付き合ってないし… 浮気ではない…違う… でも動画撮ってた人いた…彼方に見られたらどうしよう…また低脳な女だと思われる… 1人でぶつぶつ言っていると、相変わらずボリボリお菓子を食べている祥太郎が私の方を見ていた。 「今動画撮ってた方〜消してくださいよ〜」 「えーなんでよ祥ちゃーん」 「俺に彼女ができる日が遠退くでしょ」 「え、彼女欲しいの?w」 「めっちゃ欲しいです」 「絶対嘘じゃんw」 えー、いいの撮れたのになーと言いながらも動画を消している先輩。 助かった…とホッとして祥太郎を見ると、奴はまだお菓子の入ったコンビニの袋を物色していた。
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