二度と起きない奇跡

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「…しろ、真白!」 ハッと我に返る。 気付けばみんなが心配そうに私のことを見ていた。 「ごめんぼーっとしてた…」 今日は定期的に行われるサークルの同期会。 みんなが大好きな私はいつも序盤からはしゃいでいるのに、今日はずっと上の空だ。 「大丈夫…?まぁ……しかたないか」 「まさかあの王子が例の真白の元カレだったとはね…」 「いやあれは王子の皮被ったオオカミ」 「相当遊んでるらしいねー。まぁあんだけ顔整ってたら嫌でも女が寄ってくるわ。来るもの拒まずってやつ」 まさか再会するなんて思ってもいなかったから、同期のみんなには彼方のことを話していた。 “今も忘れられない大好きな元カレ” 飲み会で何度もそう口にしていたから、本人に現れられるとすごく恥ずかしくなってくる。 そんな彼は、今では大学一の遊び人らしい。 「真白。あいつはもうやめときなよ?」 そしてみんな、口を揃えてこう言う。 …分かってる。 分かってるんだけどさぁ… 「…へへへ」 「出た、真白必殺“笑って誤魔化す”」 「だってさぁ…」 「だってじゃないの。誰?って言われてたじゃない。脈なしじゃん」 「うっ」 「そうだぞ真白。傷付くだけだ。大人しくお前は俺たちの癒し系マスコットに徹しろ」 「誰がマスコットだっ!」 わっと立ち上がるとみんながケラケラ笑った。 背が低くて童顔丸顔。人見知りしないお気楽な性格。 “みんなの真白” 嬉しいのか悲しいのか、私はサークル内でペット的立ち位置だ。
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