限界

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少しすると祥太郎の家の前に着いて、お金を払ってから、秒で寝ていた奴を起こす。 「祥太郎、起きて。着いたよ」 「………」 「お、おーいっ」 ぐらぐら揺らすと祥太郎がなんとか目を開けたから車を降りるのにまた肩を貸した。 私も続いて降りようとしたところで。 ポツリと、奴がとんでもないことを言い始める。 「………鞄忘れた」 「っええ?!」 びっくりしすぎて本気で白目剥くかと思った。 「け、携帯は?」 「ない」 「家の鍵はっ?」 「ない」 ガク、と肩が落ちる。 無理じゃん。家入れないじゃん。 そういえばあのまま外出てたし、鞄部屋だよね… 気にしてあげればよかった… 今日に限って手持ちがあまりなくて、家飲みをしていた先輩の家までタクシーで戻るお金はない。 私の家までなら…ぎりぎり行ける。 『もう、俺以外家に上げないよね?』 一瞬、彼方の言葉が頭をよぎったけど、でも今はそんなことは言ってられない。 祥太郎はこんな状態だし、私が見捨てたら真冬に野宿する羽目になる。 大事な友達にそんなことさせられない。
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