1360人が本棚に入れています
本棚に追加
「すいません…あの、やっぱりもう1箇所いいですか…すぐそこなんですけど…」
半泣きになりながら運転手さんに言うと、優しく笑ってくれた。
「いいよ。…彼氏大丈夫?」
「いや彼氏じゃないです」
「あ、そうなの?」
それだけは即座に訂正して、自分の住所を告げる。
すぐに家に着いてお金を払おうとすると、運転手さんが笑って手を振ってくれた。
「お金いいよ。すぐそこだったし」
「えっ、で、でも…」
「彼、大変そうだし、今回だけ特別」
「…っ、ありがとうございます…!」
お金のない大学生にとってこんなにありがたいことはない。
深々と頭を下げてタクシーを降りると、「お酒もほどほどにね〜」と笑いながら扉を閉めて走り去って行った。
なんて優しい世界なんだ…
どうしよう、と途方に暮れていたけど少し元気が出て、よし!と気合を入れて祥太郎を支えて歩く。
「もうちょっとだから頑張って」
「…、?……真白…?」
「そうだよ……何、今更…?」
「……ここどこ…」
「私の家!あんた鍵忘れたから家入れないの!」
「そうだっけ」
まったくもう…
祥太郎って本気で酔うとこんな感じなんだな。
なんかあんまり喋んないし。
また無言になった祥太郎を引きずってアパートの階段の前まで行く。
…うわ。祥太郎支えて上るの無理かも…
と絶望していたその時。
最初のコメントを投稿しよう!