二度と起きない奇跡

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「くそ。あいつら飲ませすぎだろ…あんだけ食ったのに全部出たじゃねぇか…」 隣で歩きながらカップ麺を食べている祥太郎がぶつくさ言っている。 奴は吐けばアルコールがリセットされるいわゆるザルタイプだ。 居酒屋からの帰り道。 下宿先が近い私たちはだいたい帰りが一緒になる。 「……ねえ、祥太郎」 「なんだよ。カラオケなら行かねぇぞ。明日朝からバイト。ラーメンなら行く」 「いやもう私食べれないし」 底なしかこいつの胃袋は。 「…じゃなくてさ……私、やめたほうがいいのかな…」 何を、とは言わない。 でも祥太郎には通じると思う。 みんなは気にして彼方のことを言ってくれるけど、付き合いの長いこの男はまだ何も言ってこない。 一瞬私に横目を向けた祥太郎は、空になったカップ麺の容器と箸を途中のゴミ箱に捨てた。スープ全部飲んだら太るよ。 「真白はどうしたいんだよ」 くぁ、と欠伸しながら言う。 ねぇ…ちゃんと真剣に聞いてる? 「………好きでいたい」 たっぷり間を開けたけど、答えは決まっていた。 みんなに何を言われようが、どうしても気持ちは変わらない。 簡単に変わるくらいなら、5年も引きずっていない。
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