二度と起きない奇跡

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中学の体育祭。 毎年3年生は競技の1番最後に男女ペアのフォークダンスがある。 ペアは生徒達が自由に決めていい。 くじ引きのクラスもあるみたいだけど、私たちのクラスは自分たちで相手を決めることになって、その日のHRは、それはそれは壮絶だった。 『春くん、私とペア組もう!』 『ちょっと何言ってんの?!春は私とよ!!』 『はぁ?!こっちは前々から声かけてたんだけど?!』 取っ組み合い寸前の女子の春野彼方争奪戦。 (ひ、ひぇぇ…) たまたま彼と近くの席だった私はその迫力に圧倒され、早々に退散した。 自分が彼女たちよりもカーストが下なのは十分理解しているし、そんな争いに加わるつもりも一切ない。 『有野』 廊下側の席でだるそうに頬杖をついている男子生徒に近づく。 テニス部のキャプテン同士になってからよく話すようになった有野祥太郎。 当時は祥太郎のことを名字で呼んでいた。 『有野は誰と組むの?』 『別に誰でもいい』 『そっか。彼女他クラスだもんねー』 この頃彼女がいた祥太郎。 ペアはクラス内で決めないといけないから、他クラスに彼氏彼女がいる人には酷だよな、と思う。 そういう私は彼氏どころか好きな人もいなくて、ペアになって欲しい人もいなかった。
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