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それからというものの。
どういうわけか春野くんは私によく声をかけてくれるようになって、話す機会が増えて、いつのまにか一緒に帰る仲になっていた。
“真白”と呼ばれるようになり、“名前で呼んで”と言われ、みんなに『春』や『春くん』と呼ばれる彼を、私だけが『彼方』と呼ぶようになった。
あきらかに特別扱いされているのがさすがに私でも分かる。
こんな非の打ち所がないようなハイスペック美男子にそんな風にされて好きにならないはずがなく、あっさりと恋に落ちて、気がつけば付き合っていた。
本当に気が付けば、だった。
すべて彼の筋書き通りというような、流れるように進展していった私たちの関係。
単純でお馬鹿な私は特に深く考えることもなく、彼に夢中になった。
『彼方、彼方』
『どうしたの?』
『大好き』
『ふ、真白はいつも急だね』
『だめ…?言いたくなったの』
『いいよ。俺も大好きだよ、ずっと』
“ずっと”
その言葉を、本当に信じていた。
それなのに…
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