上書き

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幸い彼方とは席が離れて、飲み会の間関わることはなかった。 「おう真白!飲んでるか?!」 「飲んでません!」 「なんだってお前堂々と!」 「アルハラですよ、そういうの!」 「そんなハラスメントは知らん!」 「ぎゃ、やだ!ビールやだー!」 「うるさい飲めー!!」 なんていういつものやり取りをして、ぎゃーぎゃー騒いだ。 やっぱり、サークルの集まりは好き。 ネタにはされても、飲めない私を本気で咎める人もいないし、みんな楽しい人ばかり。 これからはまたちょこちょこ来ようかな、と考えながら、トイレから戻って座敷に入る。 と、 ───! 「えー春くんおもろー」 「それでその後どうなったの?」 元いた私の席の隣に、彼方がいる。 席を途中で移動するなんて、飲み会ではよくあることだ。 それなのに今の私はドバッと冷や汗が出て、その場から動けなくなった。 「あ、真白戻ってきた」 「おーい真白ー、春くん来てくれたよー」 同期の女の子に手招きされて、戻るしかなくなってしまう。 逃げ場がなくて、ロボットみたいにガチガチになりながらテーブルに行き、できるだけ彼方から距離をとって腰を下ろした。 隣からすごく視線を感じる。 「今ね、春くんと中学の頃の話してたの」 中学の頃の話?! なんでまた…! 「へ、へぇー…」 「中3で真白と春くんと祥ちゃん同じクラスだったんだ?」 「また大学で再会なんてすごいよねー」 な、なんだこの会話は。 ひやひやするなんてもんじゃない。 「ソ、ソウダネー」 「?どした真白顔青いけど」 「そ、そんなことないよっ!あ、てか、あっちで先輩呼んでる!行かなきゃ!」 「え、どこで?」 「呼んでなくない?」 何言ってるだ、と首を傾げている彼女たち。 そりゃそうだ、誰も呼んでないもん。 でももう頭おかしいと思われてもいいからこの場から離脱したい。 横から感じる彼方の視線にも、耐えられない。 「じゃ、ごめん、行ってくる…!」 半無理矢理席を立って、1番遠い席へと移動しようとした。
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