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「あの、春野くん…」
「彼方でいいよ」
「よ、呼べないよ…!」
「なんで?再会してすぐは、そう呼んだじゃん」
不貞腐れているように腕を組んでいる彼方。
なんか、キャラ違ってきてない…?
「…この前のこと…怒ってるなら、謝るから…。ごめんね、その…“初めて”じゃないなんて、嘘ついて…」
「…なんでそっちが謝るの」
そう言う彼方の顔は見れない。
とにかく謝らなきゃって。
怒ってるから、みんなの前で、あんな風に呼んで、私のこと困らせようとしたんでしょ…?
「迷惑だったよね、血とか見せちゃったし、なんか処女とか重いし…責任取れなんて付き纏ったりもしないよ。抱いてって言ったの私だから…」
震えながら早口でそう言う私の肩に、手が触れる。
びくっと顔を上げると、彼方が苦しそうな顔で私を見ていた。
「っ…」
やめて。
可哀想な目で、見ないで。
大丈夫だもん。
だって、好きな人とできたんだし。
そりゃあんな嘘ついて見栄張って、哀れな女だと思ったよね。
…でも…そうしてでも、一度だけでもいいから、彼方に触れてほしかった。
「……真白」
「あ、あのさっ……私のことなんか、名前で呼ばない方がいいよ!急にそんなの、みんな勘違いしちゃうしさ」
「別に急にじゃないでしょ。前は、」
「っあの日のことも、誰にも言わないよ。ごめんね、お情けで、夢見させてくれたんだよね。勘違いなんてしてないから」
「聞いて、真白!俺…っ」
「じゃぁ先に戻るね…!」
彼方が何か言おうとしていたけど、聞くのも怖くて立ち止まらなかった。
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