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しばらくそのまま動けずにいると、隣にいる彼方が寝返りを打って、びくぅ!と大袈裟に反応してしまった。
今にも起きそうな気配を感じて、体が動かなかったのが嘘みたいに、飛び起きて急いで服を着る。
鞄を手に取り、見当たらない自分の携帯を探した。
ベッドのヘッドボードに置いてあるのを見つけて、そーっと近づき手を伸ばす。
その瞬間パチ、と彼方の目が開いて悲鳴が出そうになった。
携帯に伸ばしていた手を掴まれ、指と指が絡められる。
「…ましろ…?帰るの?」
「〜っ」
眠そうな彼方が可愛いすぎて、悶絶寸前。
朝から刺激が強すぎる…
「う、うん…帰る…お昼からバイトだし…」
「そっか」
そこでシンと沈黙になる。
「…じゃぁ帰るね」と背中を向けようとした時、「待って」と手を掴まれ、全身に緊張が走った。
「ねぇ、真白、あのさ…」
昨日のことは忘れて。
誰にも言うな。
勘違いするな。
今回で終わりだから。
俺のことは諦めて。
次に続くいくつもの言葉が脳を駆け抜け、顔が青くなる。
「〜わ、分かってる!セフレってやつだよね!?」
被せるようにそう言うと、私の手を掴む彼方の力が緩んだ。
「……は…?」
「私、ちゃんと割り切れるからっ…大丈夫だから」
「いやそうじゃなくて…」
「じゃ、じゃぁまたサークルでねっ」
バタン、と逃げるように部屋を出て、扉を閉めた。
この時にちゃんと話を聞いておけばよかったのに、私は馬鹿だ。
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