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彼の纏う空気が変わる。
追い詰めるように私の顔の横に手をついた彼。
その瞳は、ひどく冷え切っていた。
「あのさぁ」
冷たい口調に、びくりと肩が上がる。
彼のこんな声は、聞いたこともなかった。
付き合っていた頃、いつも私には、すごく優しかった。
「遠回しに牽制したの、分からない?」
だから、こんな言葉が、彼の口から出ていることが信じられなくて。
「…え…?」
同様で、瞳が揺れる。
続けられた言葉は、もっと私を蔑むもので。
「幼稚すぎて、元カノどころか同級生とも言いたくないね。恥ずかしい」
………待って。
「しかもいかにも処女って感じでさ」
こんな彼方、知らない。
声も出ない私の顔を覗き込み、意地悪な笑みを浮かべる彼方。
こんな風に笑う彼を、私は見たことがない。
「図星?」
「〜〜っ」
かぁっと顔が真っ赤に染まる。
恥ずかしくて、唇が震えた。
男性経験なんて、そんなの、ない。
だって、彼方と別れてから彼氏どころか好きな人もできなかった。
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