見えない首輪

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彼方が商品を手に取りレジに歩いてくる。 店長は裏でオンラインミーティング、他の社員やバイトも別の作業中、レジには私しかいない。 逃げ場はなく、バチンッと思いきり目が合った。 「……え」 「ぃ、いらっしゃいませ〜」 「……真白?」 「袋お付けしますか?」 「…はい。……ねぇ、」 「653円になります。お箸とお手拭き入れておきますね。…あ、キャッシュレス決済ですね、はい、読み込ませていただきます」 「なんで無視するの」 「ありがとうございました〜!!」 いつもの何倍も元気よく爽やかに挨拶して帰ってもらおうとしたのに、彼方はレジの前から動かない。 だらだらと冷や汗が出てくる。 「……ここでバイトしてたの?」 「………」 「いつから?」 「…っい、1年の時からだよ!だから彼方の家の近くだからとかそんなストーカーみたいなことしてないからねっ、違うからねっ…」 焦って彼方と呼んでいることにも気づかず、あわあわと目を回しながら必死でそう説明すると、彼はふっとおかしそうに笑った。 「別に何も言ってないじゃん」 その反応が、今までと全然違う。 前までならきっと、「何勝手に焦ってるの?」と冷ややかな目を向けられるだけだった。 穏やかな彼方の笑顔に、キュンと胸が打たれる。 最近彼方…どうしたんだろう。 「何時上がり?」 「22時だけど…」 「もうすぐじゃん。じゃぁ外で待ってる。夕飯食べた?」 「?!食べてないけど…っえ、待ってるって、え…?!」 「じゃぁこれも買っとく。おにぎり好きだったでしょ?」 「す、好きだけどっ…待って、春野く、」 「ほら早く会計して店員さん」 「あ、は、はいっ」 ピ、ピ、とレジに通して、また彼方の携帯からバーコードを読み込んだ。 「じゃぁあとでね」 買い物袋を手に取り、少し意地悪な顔で私を流し見てから外に出て行く彼方。 「〜〜っ」 そんな仕草に私がドキドキしないはずがなく。 残りの時間、一切仕事に集中できなかった。
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