見えない首輪

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「めちゃめちゃおいしかったです…ごちそうさま」 「それはよかったです」 そう言う彼は私が食べている様子をじっと見ていて、少し居心地が悪かった。 「お皿洗うから台所借りていい?」 「いいよ、置いといて」 「いや洗う。洗わせてください」 「少しだからいいって」 「だめ、洗うのっ!!」 ご飯を作ってもらってお皿まで洗わせるなんて私の中で許せなくて、勝手にシンクを借りてお皿を綺麗にさせてもらった。 タオルで手を拭いているといつの間にか背後に立っていた彼方。 ぎゅっと後ろから抱きしめられて、突然のことに背筋が伸びる。 「たまに頑固だよね、昔から」 「え…かな、た…?」 「ふ、焦ると彼方って呼ぶんだ」 “昔” 彼方の口からその類の言葉を聞くといつもドギマギしてしまう。 …あれからどうしてた? ずっと海外にいたの? 彼女はいた? …私、何がダメだった? どうして…別れようって、言ったの…? 聞きたいことは山ほどあるけど、聞けない。 詮索とか、うざい、面倒って思われるだろうし、何より聞くのが怖い。 内容によっては立ち直れないかもしれないから。
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