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「…っ…だって、わたし、ずっと忘られなくて…」
今の彼に、馬鹿正直にそんなことを言ってしまう私は、本当に馬鹿で幼稚だと思う。
でも止まらなかった。
ずっと好きだった。
何年経っても、想いは風化していくどころか、どんどん大きくなるばかりで。
そんな中、目の前に本人が現れて。
だけど彼は、涙目でじっと見つめる私に、うんざりしたようにため息をつくだけだった。
「そういうとこ、重いって言われない?」
「…っ…」
「興醒めだね。遊び相手にもならない」
彼の言葉がナイフのように胸に突き刺さる。
さっきあれだけ我慢していた涙が、簡単にポロポロ溢れてきてしまった。
…なんで。どうして。
『真白だけが、好き』
『ずっと一緒にいよう』
あの時は、そう言ってくれたじゃない。
なのに、なんで…
「どうして…っそんな、ひどいこと…」
「ひどい?」
彼が目を細めて、私の顎を引き上げる。
彼の瞳に映る私は、酷く悲しい顔をしていた。
「幻滅した?俺、元々こういう人間だよ」
「…彼方…」
「もうそうやって呼ぶの、やめてくれない?大学では自由にやりたいからさ。あんたと変に誤解されても困るんだよね」
あんた、なんて初めて言われた。
もう立ち直れないくらい、心はズタボロだ。
「じゃぁね。もっと男慣れしてから出直して」
そう言って歩いていってしまう彼方。
昔とはもう違う。
何もかも変わってしまった。
……でも。
「待って…!」
嫌だ。このままこれで終わりなんて。
やっと会えたのに。
これっきりなんて、絶対嫌だ…!
「…処女捨てたら、相手にしてくれるんだね」
「……は?」
「分かった」
これ以上泣くまいと必死だった私は、彼の表情が初めて崩れたことには気づかず、走って自分の席へと戻った。
お酒を飲む気にも、楽しくお喋りする気にもなれなくて、潰れたふりして祥太郎の上着をまた頭から被った。
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